掲載にいたる経緯
映画化したかった脚本がある。
第2次世界大戦で活躍した日系アメリカ人部隊の物語だ。
アメリカ人であるというアイデンティティをもちながら敵国人の息子として疎外された彼らと
アメリカに戻りたいのに事情があって許されない自分の人生が重なった。
脚本と参考資料は某脚本家の手に渡ったのち、まわりまわってあるプロデューサーまで行ったことまでは知っている。
たしか2010年代のことだったと思う。
しかしその先のことはわからない。
なにかあったとしてもこちらに声がかかることはなかった。
残念だがあきらめるしかない。
脚本を書くにあたり前段階として資料を読み漁ってレポートにまとめていた。
この資料作成作業は一時期筆者のライフワークとなっていた。
レポートによると最終編集が2009年4月22日になっている。
せっかくなのでこのページでそれを公表しようと思う。
少々重く硬いテーマでサイトのコンセプトと異なるが他に発表する場もないのでここに記していく。
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ダッハウ強制収容所
ドイツのミュンヘン郊外にあるダッハウ強制収容所は1933年に開設された。ダッハウはドイツで最初の強制収容所であり、のちに建設されたアウシュビッツなどのモデルとなった。ここでは、12年で206,000名が収容され、31,951名が死んでいる。この数字は記録上のものであり、実際の数字とは誤差があるといわれている。つまりもっと多いということだ。ちなみにドイツの強制収容所は、もともと共産主義者を対象としていた。
テキサス大隊救出後、3月、第522野戦砲兵大隊は442連隊から切り離され、引き続きアメリカ第7軍指揮のもとフランスとドイツの間にあるジークフリート要塞戦線へ進撃。ドイツ国内に侵攻した第522野戦砲兵大隊はドイツ軍との戦闘の末にダッハウ強制収容所を解放する。光人社発行、渡辺正清著『ゴー・フォー・ブローク!』に興味深い実話が書かれているので、ここに引用する。
ポーランド人ヤニナ。シヴィンスカさんは、医師である父親についてダッハウ収容所を訪れたために捕らわれてしまった。父親(カトリック教徒)は診察のとき、ユダヤ人に武器をこっそりと渡そうとして捕らえられ、処刑された。
ヤニナさんは自分が処刑されるときのことを、次のように証言する。――
「私は目隠しをされて、処刑されるのを待っていました。なかなか銃弾が飛んできません。
すると、誰かが目隠しをはずそうとしました。目隠しがとれると、目の前に、小さな兵士がいました。日本人でした。日本人に殺される、と思い、もうかまわない、早く殺して、と言いました。その人は、自分はアメリカ人だ、殺しはしないと必死に話していました。
しかし、私は信用せず、日本人でもいい、はやく殺して楽にしてほしいと言いました。
その人は座りこんで、涙をこぼしながら、あなたは自由になったのですよ、私たちは日本人の顔をしていてもアメリカ人です、あなたは自由に――」
ヤニナさんは処刑寸前に日系二世兵に救助されたのである。
日系2世部隊が強制収容所を解放したという事実をアメリカは隠し通し、1992年まで公にはならなかった。
ダッハウ収容所は博物館として一部保存される。のちに本土出身の日系2世が博物館を訪れたとき、バラックを見て「自分たちが収容されたアメリカの強制収容所とそっくりだ」と感想を述べた。
5月7日、ドイツ降伏。ヨーロッパ戦線終結。
9月2日、日本降伏、終戦となる。
参考資料
書籍
荒了寛『ハワイ日系米兵 私たちは何と戦ったのか?』1995平凡社
矢野徹『442連隊戦闘軍団:進め!日系二世部隊』1979角川書店(『442』2005柏艪舎 再版)
ドウス昌代『ブリエアの解放者たち』1983文藝春秋
渡辺正清『ゴー・フォー・ブローク! 日系二世兵士たちの戦場』2003光人社
ジョーゼフD ハリントン 妹尾作太男訳『ヤンキー・サムライ』1981早川書房
山田太一『あめりか物語』1979日本放送出版協会
James B.Harris『ぼくは日本兵だった』1986旺文社
望月三起也『二世部隊物語1~7』2001集英社
ウェブ
『全米日系人博物館 ヒラサキ ナショナル リソースセンター』
http://www.janm.org/jpn/nrc_jp/nrc_jp.html
『Go For Broke National Education Center.』
http://www.goforbroke.org/default.asp
『The History of Japanese Immigrants 日系移民の歴史』
http://likeachild94568.hp.infoseek.co.jp/index.html
『二世部隊物語』
http://hawkeye.m78.com/442nd.htm
柏木 史楼『米陸軍第100歩兵大隊及び第442連隊戦闘団—日系二世米兵の第二次世界大戦 The 100th Infantry Battalion & The 442nd Regimental Combat Team 日系二世部隊、ヨーロッパ戦線に参戦』
http://www.pacificresorts.com/webkawaraban/nikkei/050203/
『コロニア ニッケイ社会 ニュース』
http://www.nikkeyshimbun.com.br/040714-62colonia.html
『第442連隊戦闘団 – Wikipedia』
なおレポートはもともと他人に見せる予定がなかったので参考資料表記に漏れがあるかもしれません。ご容赦ください。