442連隊に関するレポート その3

【 大人を遊ぶ。ありきたりな日常を冒険する 】

【 Enjoying adulthood. Adventure at ordinary days. 】

映画化したかった脚本がある。
第2次世界大戦で活躍した日系アメリカ人部隊の物語だ。
脚本はまわりまわってあるプロデューサーが読んでくれたというところまでは聞かされている。
たしか2010年代のことだったと思う。
そのあとどうなったかは知らない。
残念だがあきらめるしかない。

脚本を書くにあたり前段階として資料を読み漁ってレポートにまとめていた。
この資料作成の作業は一時期筆者のライフワークとなっていた。
レポートによると最終編集が2009年4月22日ということになっている。
せっかくなのでこのページでそれを公表しようと思う。
サイトのコンセプトからして少々硬く重いテーマではあるが他に発表する場もないので。

なおレポートは他人に見せる予定がなかったので参考資料表記に漏れがあるかもしれない。
ご容赦ください。

2.第100大隊および第442連隊戦闘団について

○第100歩兵大隊100th Infantry Battalion
アメリカ軍の混乱
 当時のアメリカ軍にはもともと3,500名ほどの日系人が在籍していた。ハワイのナショナルガード(州兵)でも1500名ほど日系2世がいた。前述のとおり1940年11月に選抜徴兵制が開始されており、これら2世はほとんどが徴兵によるものと推測される。
 パールハーバー攻撃直後、ハワイ州予備役将校訓練部(ROTC)とホノルル高校の志願兵によってハワイ準州警備隊(Hawaii Territorial Guard)が編成され、アメリカ陸軍の指揮下に入る。ROTCとはハワイ大学が連邦政府から土地を使わせてもらう条件として課程に組み込んだプログラムである。これにより、すべての男子学生が2年間の訓練を受けていた。
しかし、翌年の1月19日にはハワイ準州警備隊の317名を含むハワイ2世兵すべてが除隊させられ、4-C(敵性外国人)に分類される。

一方、本土2世兵は23日、武装解除され各部隊から隔離される。このとき白人兵が2世兵に銃を向けた場面もあった。
強制収容が始まると、本土2世兵901名はカンザス州ロビンソン基地に集められる。基地周辺の住民はこれに反発。敵国である日本人の血を引くというのはもちろんのこと、住民が最も危惧したのは黒人に与える影響だった。黒人差別のはげしいこの地区で、便宜上白人として扱われた日系2世兵にたいし、黒人がどのように反応するのか地元住民は恐れた。実際、住民が最初に問題としてとりあげたのは、地元の黒人女性と付き合っていた2世兵であった。

ハワイではROTC候補生169名が「自分の国アメリカのために尽くす機会を与えてほしい」と嘆願書を提出。大学内YMCAのディレクター、ハン ワイ チン自ら情報部ケンダル フィルダー大佐に手渡した。フィルダーの説得もあり、ハワイ総司令官ディロスCエモンズ中将は2月25日、技術予備労務隊として俗に言うトリプルV(Varsity Victory Volunteers)を第34工兵連隊のもとに編成する。その一方で軍は3月30日、日系人の徴兵を中止した。
 ある基地での兵士の会話。「もし日本軍が攻めて来たら、おまえ、どっちを撃つ? 奴らか。それとも俺か?」「バカ。俺はアメリカ人だ」

※ 「ハワイ州兵隊」「ナショナルガード」「ハワイ国防軍」「地方防衛軍」「ハワイ直轄領守備隊」「ハワイ準州警備隊」「ハワイ準州国土防衛軍」どれがどれだか正直わからなくなった。はっきりしているのは第1に「ハワイ準州警備隊」はHawaii Territorial Guardであり、ごく一時期に使われた言葉であろうということ。第2に「ナショナルガード」はアメリカの場合 州兵を指すということ。ただし辞書をひくと「国防軍」となるので翻訳者によってはナショナルガードをハワイ国防軍と訳した可能性がある。「ハワイ直轄領守備隊」という言葉を使うのは『ハワイ日系米兵』のみである。この書籍のP56には「地方防衛軍」=「ハワイ直轄領守備隊」となっており、それとは別に「ハワイ国防軍」が存在している。おそらく前者がHawaii Territorial Guardを指し、後者が州兵を指すのであろう。

エモンズの不安
 ハワイにおける日系社会の必要性を理解していたエモンズ中将は、フィルダー大佐の説得もあり、ワシントンからの日系人本土移送計画や、日系人排除方針をのらりくらりとかわしていた。事実、人手不足を理由に開戦後も第298部隊、第299部隊を各島の沿岸警備につけている。
だがエモンズは1942年5月、海軍情報部から日本軍の計画を聞かされてしまう。ミッドウェー攻略である。エモンズは不安にかられた。もしニミッツ提督率いるアメリカ海軍が破れたら日本軍はハワイに上陸するだろう。もし日本軍の兵士がアメリカ軍の軍服を着てハワイに潜入したら、いったい2世兵とどう区別すればいいのか……。
12日、エモンズは日系2世兵のみの大隊をつくり、本土に移したい旨をワシントンの陸軍省に伝える。28日、ワシントンがエモンズの要請を承諾。それに先立つ26日、ハワイのスコフィールド基地にナショナルガード(298部隊および299部隊を指すと思われる)に在籍する2世兵1,432名が集められ、武装解除のうえハワイ臨時歩兵大隊Hawaii Provisional Infantry Battalionに編成される。

第100歩兵大隊の誕生
1942年6月、ハワイ臨時歩兵大隊は人知れずS.S.マウイ号に乗りこみ、完成間もないゴールデンゲートブリッジをくぐりオークランドに入る。夕闇を待って下船。このとき初めてハワイ2世はアメリカ本土の土を踏む。のちの442連隊も含め2世たちは、ハワイと違って本土では必ずしも白人が圧倒的地位にないことを知る。そして本土では酷い黒人差別があることも学ぶ。
ハワイ臨時歩兵大隊はここで正式に第100歩兵大隊100th infantry battalionと命名される。正確には100th infantry battalion(separate)と括弧付でセパレートがつく。セパレートとは独立した部隊という意味である。また、そもそも第1大隊、第2大隊、第3大隊と順番に名づけられる大隊で100というありえない数字そのものが、どこの連隊にも属さない部隊を意味している。なぜ独立した部隊なのか。これにはいくつかの解釈ができる。まずもてあまされた部隊であるということ。次に日系2世兵の隔離と監視。最後に日系2世が使い物になるかどうかという実験部隊としての役割である。
皮肉にもこの日系部隊の独立性という概念が、のちの442連隊において補給部門、医療部門などの支援部隊を充実させることに繋がり、実戦において頼もしい部隊となる基礎をつくった。
兵士たちは自嘲気味に第100大隊をワン プカ プカと呼んだ。プカとはハワイの言葉で穴を意味する。
ちなみに、単一民族で編成された部隊は、日系2世部隊の他に、黒人のバッファロ部隊とネイティブアメリカンの情報部隊がある。また、独立した大隊は第100大隊の他に、第1~第6レンジャー大隊のみである。
第100歩兵大隊は総勢1,432名。大隊長のターナー中佐以下、ジェームス ラヴェル少佐、ジョン ジョンソン大尉、日系2世の将校16名。そして日系2世兵で編成。A、B、C、D、E、Fの六個中隊からなり、各中隊は三個小隊で編成されていた。
当時のアメリカ軍は入隊時にIQテストをおこなっていたが、第100大隊の平均知能指数は103であり陸軍中トップである。通常ではIQ110以上の兵は将校資質保持者として士官学校に入る決まりであった。

関連

442連隊に関するレポート その1
442連隊に関するレポート その2

442連隊に関するレポート その4
442連隊に関するレポート その5
442連隊に関するレポート その6
442連隊に関するレポート その7

参考資料

書籍
荒了寛『ハワイ日系米兵 私たちは何と戦ったのか?』1995平凡社
矢野徹『442連隊戦闘軍団:進め!日系二世部隊』1979角川書店(『442』2005柏艪舎 再版)
ドウス昌代『ブリエアの解放者たち』1983文藝春秋
渡辺正清『ゴー・フォー・ブローク! 日系二世兵士たちの戦場』2003光人社
ジョーゼフD ハリントン 妹尾作太男訳『ヤンキー・サムライ』1981早川書房
山田太一『あめりか物語』1979日本放送出版協会
James B.Harris『ぼくは日本兵だった』1986旺文社
望月三起也『二世部隊物語1~7』2001集英社

ウェブ
『全米日系人博物館 ヒラサキ ナショナル リソースセンター』 
http://www.janm.org/jpn/nrc_jp/nrc_jp.html
『Go For Broke National Education Center.』
http://www.goforbroke.org/default.asp

『The History of Japanese Immigrants 日系移民の歴史』
http://likeachild94568.hp.infoseek.co.jp/index.html
『二世部隊物語』
http://hawkeye.m78.com/442nd.htm
柏木 史楼『米陸軍第100歩兵大隊及び第442連隊戦闘団—日系二世米兵の第二次世界大戦 The 100th Infantry Battalion & The 442nd Regimental Combat Team 日系二世部隊、ヨーロッパ戦線に参戦』
http://www.pacificresorts.com/webkawaraban/nikkei/050203/
『コロニア ニッケイ社会 ニュース』
http://www.nikkeyshimbun.com.br/040714-62colonia.html
『第442連隊戦闘団 – Wikipedia』

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