毎年2月最初の日曜日、
日本ではだいたい節分の時期にアメリカンフットボールの頂上決戦、スーパーボウルが行われる。
アメリカではカレンダーに載っていない祝日と呼ぶ人もいて勤務中でも仕事が手につかなかったりする。
またN.Y のバーなどではクォーターごとに賭けが行われているのが見られる。
日本でも放送されてはいるが、多くの人はルールの複雑さについていけないのが本音ではないだろうか。
そこで本ページではこれだけ! たったひとつ押さえておけばアメリカンフットボールが確実におもしろくなるコツを教えたい。
目次
見るのは線
アメリカンフットボールがわかりづらいのはルールの複雑さだと一般的には思われている。
それも間違いではない。
しかしルールがわからない以前に多くの人が陥っているある誤解を理解するほうが大切である。
その誤解があなたの理解を拒んでいるのだ。
逆に言えばそのたったひとつのポイントさえ掴んでしまえばルールの理解はあとからついてくる。
アメリカンフットボールの理解を拒んでいるのはずばり視点である。
通常球技の場合『ボールはどこにあるのか』という点を追いかけている。
野球ならばボールを誰が持っているのか? ボールが人の手から離れてどこにあるのか?
サッカーなら誰がボールをコントロールしているのか? どこにボールがあるのか?
つまり観客はボールという一点に注視しているのだ。
アメリカンフットボールももちろんプレイ自体はこれが基本である。
しかしここにトリッキーな落とし穴が潜んでいる。
アメリカンフットボールは点で見てはいけない。
アメリカンフットボールは線もしくは面で見るのだ。
ウォーシュミレーションゲームとして見てみよう
アメリカンフットボールを理解する為に一旦ここで遠回りをして戦争とはなんぞやという話をしていこう。
戦争の定義は人それぞれ違うと思うがここで主張するのは『戦争とは一言で表現するなら土地の奪い合いである』ということである。
戦争とは煎じ詰めれば土地をどれだけ奪えるか。もしくは守ることができるかである。
人類は少なくとも数万年のあいだこのために争ってきた。
もちろん現代では領空、領海も含まれることを付け足しておこう。
実はアメリカンフットボールはウォー・シュミレーションゲームとして見るとわかりやすい。
アメリカンフットボールは土地の奪い合いを究極まで簡略化したSIMなのだ。
つまりアメリカンフットボールのプレイはいかに相手の土地を奪うか?
あるいは自軍の土地を守るかということをやっているのである。
はいこれだけ。
これさえ理解してしまえばアメリカンフットボールの見えなかったものが見えてくる。
初心者だったあなたは一気にアメフトのおもしろさに魅了されるだろう。
繰り返しになるがボールは攻撃側がどこまで土地を奪ったかの目盛りでしかない。
大事なのはフィールド脇に立つ審判(ラインズマン)の赤い矢印である。
これこそがオフェンス側がどこまで進んだか?
つまり攻撃側がどこまで侵略したかを示す線(ライン)なのである。
最近ではテレビ放送によってはリアルタイムで CG の線を引いてくれることもあるのでわかりやすい。
これを踏まえたうえであらためて簡単なルールを説明していこう。
ざっくりとしたルール説明
フィールドにあがる選手は各チームごと11人まで。
一般的にアメリカンフットボールの場合オフェンスとディフェンスがはっきり分かれていて攻守が変わるときに選手がまるごと交代する。
野球が攻めと守り両方をやったり、サッカーがオフェンス、ディフェンス、ゴールキーパー一緒にプレイしているのとは大きく異なる点である。
アメリカンフットボールは完全な分業制でオフェンスはオフェンスのみ。ディフェンスはディフェンスのみ、さらにキック専門の選手までいる。
攻撃側つまりオフェンスは一度のターン(シリーズ)で4回までプレイできる。
よく比較されるのが野球で「野球は3アウトチェンジだけれどアメフトは4アウトチェンジ」などと例えられる。
この4回までに10ヤード進むことができれば、また自分のターンになって4回プレイできる。(ファーストダウン獲得)
カードゲームに例えるならば10ヤード進めたので再び俺のターン!
つまり4回の攻撃で10ヤード分の土地を奪うことさえできれば、何度でも攻撃を繰り返すことができるということだ。
ではどこまでこの攻撃が続くのだろう。それはタッチダウンまでである。
タッチダウンとは競技場の端にある敵軍の陣地(エンドゾーン)までボールを持って到達することを言う。
アメフトの場合ボールを持った選手がエンドゾーンまで来ればその時点でタッチダウン成功。ゴールに入れるとかボールを地面に置くといったプレイは必要ない。もちろん場外は不成立。
タッチダウンが成功すると6点。
タッチダウンは無理っぽいけど距離的にボールを蹴ってゴールポストに入れる(フィールドゴール)ならできそうという場合にはあえてタッチダウンをあきらめてキックすることもある。
この際には3点。
当然点数の良いほうを選びたいところだが距離やタイムや点差、相手の心理状態など様々な条件を考慮しなければいけなくここから先は頭脳戦へと入っていく。
プロレスラーのような巨体の選手から戦略に長けた知性派の監督まで様々なタイプの人達が試合に勝つため1つのチームに集まっているのもアメフトの魅力だ。
タッチダウンが成功するとボーナスゲームが発生する。(トライ、エクストラポイント)
トライでフィールドゴールを成功させたら1点追加。
もしくはもう一度タッチダウンすると2点が追加される。
それでは点数を整理しておこう。
フィールドゴール成功:3点 トライの権利無し
タッチダウン成功:6点 トライの権利発生
トライでフィールドゴール成功:1点追加
トライでタッチダウン成功:2点追加
最大で8点。
少なくて3点。
最小で攻撃失敗の0点。
通常はタッチダウンのあとのトライでフィールドゴールして手堅く7点取るのが流れだと思っていい。
トライもしくはフィールドゴールが終わるか、4回のダウンまでに10ヤード進むことができなければ(10ヤード土地を奪えなければ)攻守が交代。
60分の間にこの攻めと守りを交互に行う。
基本はこれだけである。
この基本に徐々に細かいルールを継ぎ足していけばもう貴方はアメリカンフットボールの虜だ。
もう少し詳しいルール説明
フィールドの縦横の長さはフィートやヤードで表される。
エンドライン160フィート × サイドライン120ヤードの長方形。
エンドライン手前には10ヤードのエンドゾーンがありここがタッチダウンする場所となる。
またエンドゾーンには高さ10フィート × 幅18.5フィートのゴールポストがある。
フィールドの中心には50ヤードの目盛りがある。敵軍まで50、自軍まで50.
合わせて100ヤードを選手はプレイすることになる。
フィールドの外側はアウトオブバウンズと呼ばれプレイの対象外である。
内側はインバウンズ。
パスを受ける選手がぎりぎりインバウンズに入るよう足のつま先を白線上に残してキャッチする妙技は見ものである。
試合時間は60分で15分ごとに一旦試合を止める。
4回あるので第1クォーター第2クォーターなどと呼ばれる。
大きな試合の場合、第2クォーターと第3クォーターの間のハーフタイムにハーフタイムショーが催される。
サッカーにおけるロスタイムと同じものがあるので全体の試合時間はだいたい2時間くらいが目安。
試合は大抵コイントスからはじまる。勝ったほうが攻守と陣地を決めてキックオフとなる。
キックオフに代表されるように得点したり試合が再開されたりの仕切り直しには必ずフリーキックがなされて敵軍がボールをキャッチしたところから始まる(再開する)。
あとは上述のとおり。エンドゾーンに向かってひたすらボールを前に進める。
今何回目の攻撃であと何ヤード残っているかはファーストダウン・テンのように表現される。
セカンドダウンいくつ、サードダウンいくつ、フォースダウンいくつと続く。
ボールを前に進める方法には通常パスプレーとランプレーの2種類がある。
パスプレーは味方に向けて長い距離をパスすることで前に進む。受ける選手がボールを落とす(パスインコンプリート)と失敗。
ランプレーはボールを持って走ることで前に進む。ボールを持った選手の手と足以外の身体が地面に着くとプレーは終了。(ダウン)
ランプレーかパスプレーかはクォーターバックと呼ばれるポジションの選手にゆだねられる。
たまにパスする味方が見つからずクォーターバックみずからランプレー(スクランブル)することもある。
またしばしばパスと見せかけてランプレーのようにトリッキーな戦術が見られる。
これ以外にファーストダウンが取れないと諦めてキックプレー(パント)することもある。
この場合攻守逆転は必至なので、なるべく遠くに飛ばして守りを固める。
ボールが(場外)アウトオブバウンズに出ると試合は中断。
実はアメフトはどこまで攻めたかの線を見るのと同じくらいに残り時間が重要だったりする。
そのためあえてアウトオブバウンズしやすいプレーをしたり反対にインバウンズになりやすいプレーをしたりという戦術も見慣れてくるとわかってくる。
落としたボールを敵チームに確保されたり強引に腕から奪われたりしたら、その瞬間から攻守が逆転。
たまにパスプレーが失敗して敵オフェンスがキャッチしてしまい(インターセプト)そのまま走ってタッチダウンすることがある。こういう場合は一気に流れが変わるので会場が沸く。
アメリカンフットボールは奥深くこの他にも様々なプレーやルールが存在する。
プロレスのような肉弾戦と囲碁、将棋のような頭脳戦をミックスしたものがアメリカンフットボールなのだ。